話すコトバをアタシは知らない
2007-05-05T22:48:01+09:00
sizukugaotita
コトバを集めて...
Excite Blog
No.07 ひらがな
http://itrains.exblog.jp/6818720/
2007-05-05T22:48:01+09:00
2007-05-05T22:48:01+09:00
2007-05-05T22:48:01+09:00
sizukugaotita
恋 愛
やるせなさを押しのけて、起きた瞳にうつったのは雨空。
夜のうちに干してしまった洗濯物はぐっしょりと濡れていた。
「サイアク」
湿気が、梅雨の到来を告げている。
テレビの向こうで梅雨入りについて語る気象予報士を、彼女は鼻で笑う。
膨らんだ髪は、いくらワックスをつけてもまとまらない。
荒れかけた肌は、つけたばかりのファンデーションを押し返す。
「サイアク」
歩くうちに、パンプスを汚す泥水に彼女は顔をしかめた。
目的地に着くころには、整えた髪も傘のなかでほどけきって、力なく緩んでいた。
「サイアク」
時間3分前。
約束の場所まで、あと10歩ある。
視界をさえぎる柱さえなければ、彼に会えるだろう。手持ち無沙汰に、時をやりすごしている落ち着かない彼の姿が目に浮かんできた。ちょっと立つ位置をかえれば、実際に見ることだってできるだろう。
しかし、彼女の足は止まった。
雨の音はしないのに、空間は雨の匂いに満ちている。
傘から流れ落ちる滴が、磨かれた床を溺れさせていく。踵の打ち出す音はにぶい。
彼女は音をさらに潜ませながら、柱に背を向けた。視線の向こうには女性用トイレの赤いマークが、彼女を呼んでいた。
濡れたバックのなかで、ポーチもしっかり泳いでいる。マスカラやパウダーたちが、起こしてくれるのを待っている。
ガラスの彼女は、彼女の姿を笑うだろう。
時刻は2分前。足は彼よりも、ガラスの自分を求めている。
背中から、呼ぶ声があった。
はじめ、彼女の足は止まらなかった。湿気た髪で頭がいっぱいだったし、なにより彼女の耳はそのとき機能していなかった。
二度、同じ声がした。
三度目、四度目、同じ声とともに靴音がひびく。
「返事しろよ」
肩をたたかれ、彼女の足は止まった。
「っびっくりした」
「何度も呼んだ」
一瞬、なにか言いたげな顔をしてから彼は、驚く彼女を笑った。彼女は未練がましく赤いマークを見やりながら、膨らんでいるだろう髪を撫でていた。
「髪型かえた?」
「まさか」
「似合うね」
撫でていた手が止まって、次に怪訝そうな顔で彼女は「似合う」と言った男の顔を見つめた。少しの動きも見逃さないといった目で、口をヘの字に曲げて、少し突き出した顎から彼女は聞いた。
「からかってるの?」
「まさか」
少し大げさに目をあけてみせて、彼は首をふった。機嫌を損なったふうの彼女に驚くように、彼の視線は、寝癖のようにウェーブした髪の間を縫っていた。
「ホントに?」
「ほんとうだって。いつもとはまた違う感じでいいなって」
まだ少しのあいだ顔をのぞいていた彼女は、ふんと頷いて背をむけた。
「ありがとう」
背中の遠いところから、赤いマークが笑ってた。
「どういたしまして」
ガラスの彼女も笑っていた。
その笑いはきっと、嘲笑よりも、あたたかい。
title→「 霜月の泪 」]]>
No.06 無邪気な笑顔
http://itrains.exblog.jp/6727702/
2007-04-13T13:32:40+09:00
2007-04-13T13:22:37+09:00
2007-04-13T13:22:37+09:00
sizukugaotita
現 代
胸元で眠っていたはずの温もりはない。
肩越しに感じていたはずの息差しもない。
沈み込むベッドのうえに独り、彼女はいた。
立ち上がれば見知らぬ女性が、厳かにお辞儀をした。
床は大理石らしく、天井からの光を白々と返していた。
右を向けば、出窓があり、まだ薄暗いなかでも広大すぎる庭がうかがえた。
「子供はどこ」
差し出された靴に足を入れながら、彼女は尋ねた。
声は高すぎる天井に木霊して、窓の向こうに吸い込まれていく。
「夫は」
重い衣服はルネサンスを彷彿とさせる華やかさに満ちていた。
「ここはどこ」
誰も答えはしない。
儀式の最中であるように人々は、慎み深く彼女の姿を清めていく。
ヒステリックに叫びだしそうなのを堪えていると、どこからともなく赤子の泣き叫ぶ声が響きわたった。
聞き覚えのある声で、彼女は息子の名を呼んだ。
自らの瞳からも落ちそうになる涙をこらえるように、強くまぶたを閉じて、手をさしのべた。
なにかが指先を温めた。
なにかが髪を撫でた。
強く耳を塞ぎ、強く目を塞ぎ、口をつぐんで、次にひらいたとき、世界は帰ってきていた。
心配そうにのぞきこんでくる夫の顔と、
涙痕もそのままに眠り込んでいる息子の姿が視界いっぱいにあった。
「夢を、みていたみたい」
彼女はただ、そう言った。
―― 人生はすべて夢、あまたの夢は一つの夢なのだから
カルデロン・デ・ラ・バルカ ――
title→「 霜月の泪 」]]>
No.05 穢れた理由
http://itrains.exblog.jp/6682048/
2007-04-02T13:54:00+09:00
2007-04-03T15:31:15+09:00
2007-04-02T13:54:55+09:00
sizukugaotita
歴 史
左手にずしりと重い刀は、鈍く光りもしない。
前に伸びた右足を左に転ずれば、乾ききった草木の萎びた声を聞く。風はなく、啼鳥も消えさり、霧時雨だけが二人の視界を暗くしていた。
相手は重手を負っても生き延びた男である。
切らねば死ぬ。
半蔵にはそれしかない。
添えた右手の強張りが、握る左の緊握が、手骨にまで響くようだった。
拳一つ分下がれば、霧中から伸びる剣先がある。煽るように、時おり揺れる剣先だったが、ぶれることは一度もない。
無心であらねばと思うほど、半蔵の体は汗にまみれていく。乾霧にもかかわらず、衣服は異様に重い。
息合いを探りながら、肩に入った力を抜こうとする。
その時だった。
首に刃が伸びた。見えたのは瞬間で、よけたのも瞬間だった。首筋から生ぬるいものが垂れる。構えたときに、男の刀は半蔵の腹めがけて振り落とされていた。
しまった。
思ったときを同じくして、身中から鈍い音がした。
剣先のかすかな開放感に目をあけてみれば、半蔵の刀は男の喉を貫いているのであった。
驚きに開口したまま、男は朽ちたようだった。
刀身にかかる重みに半蔵は刀を引きかけたが、ふと腹のあたりに動くものがあって動きを止めた。
視線を下ろしてみれば、飛焼が見えるほど近くに刀があった。
男の刀は、半蔵の右腹から臍までを両断していた。ちょうど背骨近くで刀は動きを止めていた。
「奴(やっこ)さん、何人やってきたんだ」
脇差でもないのに切れ味としては、すこぶる悪い。刀文の黒い染みに気づいた半蔵は小さく笑った。わずかな動きでも、臓腑の枯れのほどは知れた。
「手入れがなっていねぇ」
なるほど、奴は武士じゃねぇ。
蔑むように言ってから、その笑いがひどく空虚に思われた。
半蔵が崩れれば、埋まった刀は臓腑を引きずりだすだろう。
柄を離せば、男は崩れて刀は半蔵を切り裂くだろう。
半蔵は空虚に身を置くしかなかった。
霧中で独り、死人相手に半蔵は戦っていた。
「手入れがなっていねぇ」
左手にずしりと重い刀は、鈍く光りもしない。
title→「 霜月の泪 」]]>
No.04 光と闇の境界線
http://itrains.exblog.jp/6676803/
2007-04-01T10:51:12+09:00
2007-04-01T10:51:12+09:00
2007-04-01T10:51:12+09:00
sizukugaotita
ファンタジー
夕日があたりを染めて、彼女の姿を照らしだしていた。目を閉じても明光は瞼に映りこんで、眠ることを許さなかった。
「助かるかしら」
傾くにつれ濃化していく風景は、まもなく来る夜をよりいっそうと映えさせた。
手をひく彼の息差しはひどく苦しげで、彼女は催してくる涙をふりはらうのに必死だった。
「あぁ」
落陽は、繋がれた二人の手指にさえ影をおとした。
「でも、これから」
「なんとかなるさ」
駆けてきた道を顧みるゆとりもなく、また進むべき前途に道はなかった。
銃声がひびく。
「走るぞ」
言ったときには走り出していた。
二人の足に靴はない。
昏暮の空に、淡い光を含んだ月が浮かんでいた。月光は二人の姿に、いつまでも影を与えつづけた。
本物の暗闇などありはしないのだから、と。
title→「 霜月の泪 」]]>
No.03 鳴らない電話
http://itrains.exblog.jp/6661709/
2007-03-28T20:19:49+09:00
2007-03-28T20:19:49+09:00
2007-03-28T20:19:49+09:00
sizukugaotita
現 代
掃除は好きだったし、雑巾がけも日課にしていたけれど、受話器にだけは埃がつもっていた。
間違えて触れてしまえば、指紋が浮き出そうなほどの埃を祐子はあえて拭わなかった。
「捨てるか、譲るかしたらどうなの」
と聞かれても曖昧に笑むばかりで答えなかった。
電話はときどき鳴り響き、音にあわせて埃は舞った。鳴り止むまで家は落ち着かず、鳴り止んでも不自然な震動はそこここに居座っていた。
「どうして捨てないの?」
人に番号を教えることはなかった。
あまりに単純すぎて、悪戯やセールスでしか鳴らない電話だったけれど、祐子は電話を捨てなかった。
「嬉しくなるから」
長い髪を指にまきつけながら、祐子は笑っていた。
「あぁ、私のこと呼んでくれる人が今この世界にいるんだって思うとね」
尋ねた女性はソーサーにカップを戻すと、開けてしまった口を閉じた。
「音を聞くと、あぁこの音は私を探してるんだって」
赤子が母を求めるように。
「でも、拭いてあげないんだね」
もう一人が言う。
巻きつけていた指を引き抜くと、祐子の右の髪はわずかに円を描いていた。
「うん、まぁね」
二人は顔を見合わせた。
「それって、悲しいことね」
祐子は左の髪に指を巻きつけながら、不思議そうに首をかしげていた。
「そうかしら」
そう答えてから幾月かが経っていた。
ある日を境に、電話のベルは止んでしまった。
それから二度と、ベルの音が埃を舞い上げることはなくなった。埃は電話をなおも覆っていった。際限なく、埃は電話の形を朧にしていく。
祐子の耳のなかで二人の声が、反響していた。
「それって、悲しいことね」
不思議そうに埃に埋もれた電話を見ながら、祐子は頷いていた。
「そうね。そうかもしれないわ」
title→「 霜月の泪 」]]>
No.02 裏切り者と呼ばれても
http://itrains.exblog.jp/6657811/
2007-03-27T21:24:35+09:00
2007-03-27T21:24:35+09:00
2007-03-27T21:24:35+09:00
sizukugaotita
現 代
「知ってる?」
大きな枯れ葉は、ときおり彼女の顔を隠した。
「そのときは嘘でもね、ホントにしてしまえば嘘じゃなくなるの」
額から汗が滴り落ちていた。コートさえ羽織っていないのに、彼女の言葉が脇の下、足の裏まで濡らしていく。
「知ってるよ」
また大きな赤い枯れ葉が落ちて、こちらの視線をさえぎった。彼女の口もとだけが視界に残り、口角の上がった唇が脳裏に焼きついてしまった。
「じゃあ、嘘だったとしても、最期までつきとおせば嘘は嘘じゃなくなるっていうのは知ってる?」
「それは」
見上げると、朱色が目にまぶしかった。夕日に染まった空と、夕日にそまった枯れ葉が、頭上をどこまでも覆っているようだった。雪よりもはやく、木の葉は舞い落ちてきた。
「初耳かな」
一つの枯れ葉に興味をひかれた。
風に揺られながら名残惜しげに木から離れない葉は、とても小さかった。
「ねぇ」
次の言葉は聞こえなかった。
風が吹いたことに感謝した。
強い風は枯れ葉たちをさらっていったけれど、舞い落ちた枯れ葉は彼女の顔を隠してくれた。
強い風は彼女の声を消し去っていったけれど、言葉の意味まで持ちさってくれていた。
そう思えた。
「いいよ」
気楽に言えた。
それも風に感謝した。
「好きにするといい」
彼女は微笑んでいた。
――好きな人ができたの。
彼女の瞳は痛すぎた。
枯れ葉がまた、隠してくれることを願った。
あとがき...「主人公は男性、それとも女性?」
title→「 霜月の泪 」]]>
No.01 讃え。そして、敬え
http://itrains.exblog.jp/6652644/
2007-03-26T17:28:56+09:00
2007-03-26T17:28:56+09:00
2007-03-26T17:28:56+09:00
sizukugaotita
ファンタジー
「王じゃない」
確信していた。
彼は一人だったし、エルザの腕にはたくさんの傷跡があったから、彼女はその慄いた男を睨んでいることができた。
「もう王なんかじゃない」
紅い絨毯は人の血よりいくらか薄く、きらびやかな黄金の装飾はエルザのナイフよりいくらか空々しかった。
椅子に腰かけた男は怯えていた。
エルザが近づけば近づくほど、彼から気品や気位、国家が欠けていくようだった。
「あなたは王なんかじゃない」
国は滅びすぎていた。
大臣たちは気ままに暮らし、民衆は無関心でありすぎた。
気ままを倣った王は、人からあらゆるものを奪ってきた。人はとられると愚痴を言い、仲間内で議論した。しかし陽がのぼれば人々は良き労働者としてつとめていた。
年が経つごとに上の行いは度を越えていき、幾多の人が消えた。
「遅すぎた」
エルザは言う。
人があえぐ頃には、もう民に力はなかった。気づいたときには全てを王にとられていたのであった。
新しく生まれた命はこの世界の無力さに泣いた。
「もっと早く気づくべきだった」
反国家組織が肥大化していこうとも、国は気づかなかった。国が気づいたころには国家の軍力を上回っていた。それでも王は気ままに暮らした。
新しく生まれた命たちは、殻をやぶったのだった。
王の左右に人はいない。
大臣たちは気ままに過ごし、気ままに仕事をやめていた。
空っぽだった。
「なにが欲しい?」
王は知らない。
「金か?」
貨幣に価値がないことを。
「位か?」
国家に価値がないことを。
「いらない」
エルザは首をふることもしなかった。
「ではなにが欲しいのだ!」
少し考えてから、エルザは静かに言った。小さな声でも響くほど、世界は空虚だった。
「わからないわ」
口をつぐんだ男は、次に笑っていた。微笑みより遥か遠く、冷笑とも違う、狂った笑声だった。
「わからない? ではなぜ動く? 私を殺してどうする、国を建てるのか。おまえが王か」
王になった自分を想像して、エルザは寒気がした。渋面をつくったエルザを見て、王の声はさらに高まっていった。
「王はいやか。いいぞ、王は。好き放題できるのだからな」
ナイフを持つ手が強張った。
「そのうえ、唐突に‘お前は王じゃない’と言われ、見知らぬ女に殺されてしまうのだからな。いいぞ、王は」
民は気づくべきだったのかもしれない。
男は王になるべきではなかった。
官僚は自己中心的でありすぎた。
しかし、とエルザは思う。
民も無関心でありすぎた。
「誰も私を敬ったりしない。臣下たちだってそうだ。私は叩けば出てくる小槌にすぎなかったのさ。民はどうだ。私は縁起のいい飾り物としか思っていたのではないか?」
そう、民は無関心だった。
国を興そうとしても飾り物の王は、臣下たちから邪険にされるだけだったのかもしれない。
「私は悪くない。みんなが悪いんだ」
民が王を敬っていれば、王は力を持ち、国を興せたかもしれない。
民が国家を思っていれば、人は消えなかったかもしれない。
「そうだ、みんなが悪いんだ」
エルザは歯噛みした。
彼女はしゃがんで、床にうつった自分の影にナイフを突き刺した。何度も何度も、彼女は影を刺していた。
男は笑いつづけていた。
いつまでもいつまでも、彼女は影を刺していた。
title→「 霜月の泪 」]]>
夫 婦
http://itrains.exblog.jp/6126314/
2006-12-01T15:58:43+09:00
2006-12-01T15:58:43+09:00
2006-12-01T15:58:43+09:00
sizukugaotita
現 代
そう、30年になる。
自分がいくつかと聞かれて、ひぃ、ふぅ、みぃ、と数えてみないと思い出せないような年になってしまった。
はて、三だったか四だったか、六かもしれない。考えてから、結局西暦に直して計算するはめになる。
そういえば、とのばした手の先のものも白くなっている。
まだ黒いところといえば、脛毛ぐらいじゃないだろうか。
その毛さえ、か細くなっているのだから、年はとりたくないものだ。
「ほら、どいてどいて」
掃除機をつかって足をつつく彼女にせっつかれて、重い足をどける。
通りすぎた彼女のあとを金魚の糞みたいに、うなりながら進む掃除機になんだか腹が立った。
心のなかでつぶやく。
おまえのために動いたわけじゃないからな。
「なにか言った?」
スイッチが切られ、力が抜けるような掃除機の脱力音と同時に、彼女がふりかえっていた。
「いや、なにも」
ふるふると首をふって彼女を見上げると、
「そう」とだけ返ってきて、掃除機はまた景気よく、うなりだした。
ふふん、とでもいうように掃除機は彼女に連れられて、目の前を通りすぎていく。
それがまた気にくわなかった。
息子も独立したというのに、また彼女をとられてしまったような疎外感に、自分でも笑いたくなった。
掃除機相手に奇妙な独占欲もあったものだ。
じっとしたまま、動きつづける彼女の背をながめる姿は、さぞ滑稽なことだろう。
三十年経とうとも、彼女を必要とし、愛している自身が、気恥ずかしくもあり、誇りでもあった。
「ありがとう」
自然に口からもれた。
掃除機の騒音のおかげで、声はかきけされた、と思った。
入れてもらったコーヒーに目を落とす。
少しだけ、ほんの少しだけ、掃除機に感謝していると、部屋は急に静かになった。
「なにか言った?」
彼女はふり返っていた。
また、ふるふると首をふって「いや」とだけ答えると、彼女はまた掃除機のスイッチを入れた。
「そう」
声が聞こえた。
愛してるなんて言葉、伝えたこともない。
そんな一言ですむほど、安っぽくはないのだと、威勢をはって言い訳する。
分かってる。
いつか。
言い訳して、マグカップに手をのばす。
そう、三十年になる。]]>
近況報告 2006
http://itrains.exblog.jp/6069619/
2006-11-20T17:49:00+09:00
2007-03-21T18:41:00+09:00
2006-11-20T17:49:17+09:00
sizukugaotita
つ ぶ や き
ここに来れたことが嬉しくて仕方ありません。
パソコンに触れるのも何ヶ月ぶりになるのか。
新大阪から兵庫県の川西まで引越してしまい、プロバイダーも解約。
いまだ新規契約していないままで、
今日はネットカフェからカチカチと打っています。
~近況報告~
(ココの更新ごとに、一方のブログで近況報告していけたらなぁと思っています♪)
この1年、ずいぶんな変化がありました。
周囲から言わすと、外見も中身も変わったそうで、
どうも親友なんかは会っても一瞬気づいてくれなかったりします。
少しお姉さんになって(?)、就職も目前に控え、
メイクもファッションも1人前にするようになり、
炊事洗濯もそれなりにこなせるようになりました。
なにより、「心が大きくなった」と母は言います。
余裕が少しずつ生まれていっているのかもしれません。
(同時に、鋭かった感受性が鈍っているようにも思えて、手放しには喜べていないのですが…)
今月には調理師免許の試験も受け、
自己採点では合格ラインを余裕をもって越すことができました。
いま例の漏洩問題になっている「漢検2級」も受け、なかなか充実した日々です。
これも、支えてくれる人、
母であり、親友であり、彼氏であり、また大勢の人たちがいるからだと思います。
いつ倒れても大丈夫、
いまは前に進みなさいと、
後ろを守っていてくれる人たちのいる大きな安心感。
たくさんの泣ける場所のある私は、本当に幸福であります。
ここで経験したことは、私のなかでとても大きなものを得ることでありました。
人の素晴らしさであり、
続けるという上達であり、
多くの「知る」が私の世界を広げてくれました。
私はまたここへやってこようと思っています。
いまもコトバという芸術は、私を魅了しつづけています。
―by.旅人]]>
ファンタジー
http://itrains.exblog.jp/3860715/
2005-12-04T13:20:03+09:00
2005-12-04T13:20:03+09:00
2005-12-04T13:20:03+09:00
sizukugaotita
ファンタジー
今日あふれた涙を、彼女は忘れない。
背中から伝わる心音が、彼女の血液を震わせて、流れついた血液たちは彼女の心臓を癒していた。
風が耳元を流れて、草たちが笑いあって、蜂は今日も急がしく働きつづけていた。
「帰ってこられたね」
剣が振り下ろされる瞬間。
血相を変えて走る仲間たち。
もう、どうやってその世界に行ってしまったのかも思い出せない。世界は、恐怖であり、友情であり、勇気であり。冒険であった。
「やっと帰ってこられた」
彼女はもう一度つぶやいて、顔を空へ向けた。
隣にある大木が彼女の頭上を包んでいた。濃い緑のなかに満ち溢れる生気が、まわりの空気を揺れ動かして、空が一段と青くなっていた。降り積もる生気が、心を優しくさせていた。
伸ばされた無数の枝が力強さを感じさせてくれて、彼女は体の力を抜くことにした。体をあずけると、背中から届く音がいっそう大きくなった。
太い枝たちをながめながら、大きくなったと彼女は思った。
怖かったし、悲しかったし、嬉しかった。
「帰ってこられたのね」
背中をまかせる仲間は答えなかった。
地平線まで続く澄んだ色の草たちが同じ方向に向かってなびいている。風が強くなると、草のあいだから陽色の花がひょこりと顔を出していた。大木は大きく笑っている。
大木から鳥が飛び立って、あおい鳥が後を追った。
鳥の姿が空のなかに消えると、背中から声がした。
「終わってない」
蜂はうなずいた。
「いつまでも続くし、みんな生きなくちゃいけない」
冒険はいつまでも続く。
生きることは、冒険だ。
草花はどこまでも優しい。あふれる生命はどこまでも逞しい。さしてくる太陽は、まぶしかった。あらゆる息吹が、あらゆるものを鼓舞していた。
彼女は忘れない。
今日あふれた涙を。]]>
存在理由
http://itrains.exblog.jp/3843705/
2005-11-30T16:00:46+09:00
2005-11-30T16:00:46+09:00
2005-11-30T16:00:46+09:00
sizukugaotita
ファンタジー
「私がここにいる理由を探しているの」
目の前から現れた少女は、そう言った。そのうえ彼女は言うのだ。
「思いだしたら、教えてちょうだい」と。
雨の降るなかで、傘をさした二人は向かい合っていた。
彼は少女がここにいる理由を知らなかったし、少女のことも知らなかった。だから、彼は素直に答えていた。
「僕は君のことを知らないんだ。僕は君を思い出せない」
少女は栗色の長い髪を左右に揺らした。大きな蒼い瞳が、彼の姿を映していた。鏡をみつめるように、彼は少女の瞳をみつめていた。
「あなたは私のことを知っているわ」
少女の表情に、迷いや憂いはない。はっきりと彼を見据えていた。
「僕は君を初めてみたんだ」
「私もあなたを初めてみたわ」
「じゃあ、僕たちは初対面だ」
「そうね」
当たり前のように、少女はうなずいていた。まぶたを閉じた少女の白い顔のうえでは、長いまつげが目立っていた。
「いつも初めてなの。私はいつも初めてなの」
「よく、わからない」
今度は彼が首をふっていた。近くで蛙が鳴いている。
「あなたと会うのは初めてなの。ここに来たのも初めてなの」
「だから、僕は君がここにいる理由を教えられない」
蛙がまた鳴いた。
「あなたは私をみたの。あなたは私を知っているわ」
「会っただけじゃあ、わからないよ」
雨が傘をつたって落ちていった。周りの水たまりは大きくなっていた。
「会ったから話せるの。あなたは私と話している。あなたは私の声を知っているし、私の姿を知っている」
「でも、僕は君がここにいる理由を教えられない」
雨のなか、少女は傘から腕を出した。指先が、朝顔の向こうをさしている。
「あなたは蛙の声を知っていて、蛙の姿を知っている。蛙が鳴くと、あなたは蛙が鳴いているとわかることができるの。蛙は無駄に鳴いたわけじゃあなくなるわ」
彼は少女のさした先にいるはずの蛙を探した。雨が深くなると、カーテンをかけられたように景色が鈍っていった。彼が目を細めてみると、小さく風が吹いた。
吹いた風とともに、少女の姿は消えていた。驚く彼の耳に、彼女の声が響いていた。]]>
ピ グ
http://itrains.exblog.jp/3797338/
2005-11-20T12:43:22+09:00
2005-11-20T12:44:03+09:00
2005-11-20T12:43:16+09:00
sizukugaotita
ファンタジー
豚の名前をピグという。
いまでは誰がつけたのかも分からなかったが、とにかく彼の名前はピグだった。
この街でピグのこと知らない人はいなかった。赤ん坊でも、両親の次に覚える言葉はピグなのである。
「ひぅ」と言えば、大人たちは喜んだ。
「おい、ピグって言ったぞ。ピグって」と、近くにいた父親なんかは興奮して叫んだものである。
100年生きたピグはそこかしこで笑っていた。
顔のシワは深くなるばかりで、シワの間には虫まで住み着いているといった有り様だ。事実を確認した者は皆無でも、話は大きくなって、ことわざとなってしまうほどだった。
若者たちは言った。
「ピグは俺たちの何倍も生きてきたんだ」
老人は言った。
「奴は私たちの生まれるまえからいたんだ」
ピグは英雄だった。
家族もいない独り身で、情けない笑顔を浮かべたピグは、いつも呼び捨てにされて馬鹿にされていた。
けれどもピグは勇気の持ち主だったのだ。
彼は救ったのだ。仲間たちを。仲間たちの子孫を。
いまではピグは、そのことを後悔していた。助けたことを。勇気を持ったことを。
彼らはピグを見直したが、彼らは言い続けるのだ。
「あのピグが」と。
ピグはまだ馬鹿にされていて、尊敬のまなざしを受けることはなかった。
ピグは彼らのアニメのヒーローなのだ。
身近でのろまな英雄は、英雄の姿を疑われてゆくのを知っている。
豚たちの一生は短い。
時が経つにつれて、ピグを馬鹿にしていた大人たちはなくなり、ピグと共に育った子供たちも、すでに先祖とあがめられていた。
ピグはなげいていた。
「わたしはいつ、花束をもらえるのか」
]]>
ふ ゆ
http://itrains.exblog.jp/3758338/
2005-11-11T19:57:23+09:00
2005-11-11T19:55:07+09:00
2005-11-11T19:55:07+09:00
sizukugaotita
現 代
菜々は大きく延びをした。
冷たい空気が鼻の奥をさしてきた。延びをして弛んだ服の隙間からは風が入りこんで、彼女をひきしめた。吐かれた息は白くなって、菜々を驚かせた。
草木たちはいつもと違った顔をみせて、生真面目に背筋を伸ばしている。いつかは見事だった花たちは、いまは休みとばかりに姿を消していた。鼻をつつく空気のせいで、公園のそばにあっても草の匂いはしなかった。
乾きやすくなった目は何度もまばたきしながら、いろんな姿を映しだす。
「今年一番の寒さ、ね」
肩をすかして、笑う頬の筋肉も、強張っていた。
「ニュースでは言っていたけど」
「さすがに寒いですよね」
背後から声をかけられて、菜々は瞳を大きくさせた。ふりかえると、同じようにマフラーを口元近くまでおおっている恵美が、澄んだ笑みを浮かべていた。
「遅い」
「先輩が早いんですよ」
「そんなことないよ。だって」
分厚い袖口をめくって、彼女の口は止まった。
「ほら、まだ五分前じゃないですか」
覗きこんだ恵美は時計の針を確認して笑った。口元から白い煙が出ている。
ポッ、ポッ、ポー。
煙草とは違う形をする白い煙が、二人の間で笑っていた。
ポッ、ポッ、ポー。
「早すぎて悪いことはないじゃない」
開き直った菜々は、時計から視線をはずした。上司と会うまで、あと二十分。二人の目はまだ柔らかだ。
「悪いですよ、すっごく悪い」
「どこが悪いのよ」
話しているあいだにも、耳は赤さを増していく。包む光のなかで、二人の息は暖かだった。
「だって先輩。風邪ひいちゃいますよ?」
そしたら研修行けないじゃないですか。
言われて、菜々は首を小さく振った。
「ひけるものなら、ひきたいわ」
夏は嫌われ者の日差しも、人気者になっている。朝日を歌う鳥たちも、好んで光を浴びていた。嫌われてしまった影は、夏を待ちわびているかもしれない。
「ほら、悪いじゃないですか」
「どこが悪いのよ」
知恵はわざと恨めしそうに眉をしかめてみせた。
「先輩が休んじゃったら、絶対あの人、私にガミガミ言い続けるんですよ」
二人の頭に、同じ上司の顔が浮かぶ。
「あの人ねぇ」
今日から本部での研修が始まる。終わったあとは、間違いなく打ち上げが待っているだろう。酔っ払いたちが、大量に出没するのは決まって飲み会だ。
「普段はいい人なのにね」
「酔うとどうしても」
ため息をついて、二人は思いを共有した。
隣で雀が涼しげに鳴いている。
「だから、先輩には元気でいてもらわなきゃ困るんです」
「なるほどね」
大きなスーツケースが後ろで彼女たちを急かしている。
「今日は大変ですね」
「今日も大変よ」
二人は笑った。白い煙が二人の口から軽快に姿をあらわす。
ポッ、ポッ、ポー。
冷たい空気のなかで笑う二人の頬が赤いのは、化粧のせいだけではないだろう。他愛もない会話が二人を暖めた。
ポッ、ポッ、ポー。
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帰 還
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2005-11-08T17:22:47+09:00
2005-11-08T17:21:44+09:00
2005-11-08T17:21:44+09:00
sizukugaotita
そ の 他
もう、そんなになるのかと驚く一方、まだそれぐらいにしかならないのかと驚いています。
PCが壊れて、買い換えるまでプロバイダーも解約になって、今日やっと帰ってこれました。インターネットも繋がったばかりで、久々に新鮮さを味わっています。
データというデータは全て消えて、新しい気持ちで行こうと、つけたパソコン。それでもやっぱり、あたたかいココが忘れられませんでした。いまさら帰ってきてもいいのだろうかと思いながらも、パスワードを頭の引き出しから探し出してきました。
いま私は長編を書いています。ノートに綴ることもえて、これはこれでいい経験になったのかも。
あさってからは新しいバイトが始まります。学校の合間とはいえ、毎日入る予定なので、結構忙しくなると思います。以前に比べると、量は減ると思います。でも、書こうと思います。ココで得たものは、とっても大きかったものですから。
また、ココでたくさんのものを築いていきたいと思います。
P.S.データが消滅してしまったということで、メールアドレスも失ってしまいました。今までメール交換してくださった方々。もし、よろしければ非公開でメールアドレスを教えてください。そして、この長いあいだ、連絡せずに、本当にすみませんでした。]]>
お知らせ
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2005-05-13T12:37:15+09:00
2005-05-13T12:34:53+09:00
2005-05-13T12:34:53+09:00
sizukugaotita
つ ぶ や き
最後に更新してから、結構な日にちが経ってしまいました。
今回、少しおやすみしようと思って、これを書いています。
理由は、書いても書いても「よし!」というものができない、というものです。
そのため私は「吸収生活」をおくっています。
読書読書の毎日です。
また、「よし!」という作品が書けるようになったときに再開します。
それまで、勝手ですがお返事も保留させていただきたいと思います。
コメントをくださった、みなさん。
ほんとうにすみません!
何日か、何ヶ月になるかはわかりませんが、
また元気に書ける日まで……。
では、短いものですが失礼します。
(別館のほうは、更新します^^)]]>
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